確かに、あんまり大丈夫じゃなくなってきていた。

桐谷先輩が行ってすぐくらいから、左手を猛烈な痛みが襲い始めていた。

無理して長瀬たちに笑ってみせて、俺は顧問の車に乗りこんだ。

顧問は車を発進させると、言った。

「まったく、桐谷の次は相原か。クラリネットパートはどうなってんだか」

「……すみません」

顧問も俺も、それきり黙りこんだ。