愛させろよ。

「わからないって何だよ。家の電話番号も知らないのか?」

「知ってます…けど……誰も、いません」

「仕事か? なら職場の」

「今…桐谷蘭は、ヨーロッパに……います」

顧問は苦り切った顔をした。

「そうか、困ったな……お父さんは?」

「いません」

「そうだったな……」

顧問の表情から希望が消えた。