「もし本番中に倒れたりしたら……」

「……私は…倒れ…ない………本番中には、決して…」

熱い息で先輩は言った。

奇妙なほど赤いくちびるが、生々しく艶めいて見えた。

俺は歯がゆかった。

なんで、周りの他の人たちは気づかないのだろう。

茉莉花先輩は堤先輩の腕にぶら下がって笑っている。

伊藤先輩は忙しげに飛び回っている。

俺と桐谷先輩だけが、この世界から切り離されてしまったような気がした。