「何ですかじゃない! さっきから何二人でいちゃいちゃしてんの! あと五分でリハ開始よ! もちろんチューニングは済んでるんでしょうね!」

すごい剣幕だ。怖い。

それに……今俺と先輩がいちゃいちゃしてるって言ったよな?

茉莉花先輩が俺たちを見て笑った。

「ほら加奈子、そんなに怒らないであげて。啓介くん固まってるじゃない。まだ一年なんだから」

伊藤先輩は茉莉花先輩をきっと見て言った。

「一年だからこそ、三年の本気度をわからせなきゃいけないんでしょ!」

「まあまあ。藍ちゃんが誰かと話しこんでることってなかなかないわ。許してあげてよ」

茉莉花先輩は、やっぱりふわふわ笑っている。

伊藤先輩は、呆れたようにため息をついて言った。

「茉莉花の後輩なんだから、ちゃんとしてよね」

最後にもう一つため息を残して、伊藤先輩は去った。

後ろ姿のポニーテールが、攻撃的に揺れていた。