ネクタイは普段ゆるゆるだから、加減がよくわからない。

一応しめ直して、桐谷先輩に見せた。

「このくらいで大丈夫ですか?」

「そうね……けどちょっと曲がってる」

先輩の白い手がすっと伸びて、俺のネクタイを直してくれた。

「あっ……」

あまりに自然で素早い仕草で、俺には赤くなる暇もなかった。

「これでよし」

「ありがとう……ございます」