「何がだめなんですか? 俺よりずっと上手いのに」

「確かにそうね。でも、吉永先輩は前の列でしょう。私に何かあっても、すぐには気づけない」

「そう、ですか。頑張ります……」

そこで、俺は前から気になっていたことを聞いてみることにした。

「なんで、茉莉花先輩を名字で呼ぶんですか?」

桐谷先輩は一瞬固まった。

「なんで、って……特に理由はない」

「最初、俺が吉永先輩って呼んだら、名前で呼べって言われたんですけど」

「私にもわからないの。でもなぜか名前では呼べないの」

「そうですか……」

まあ、そういうこともある、のか?