先輩の言おうとしたことが気になったが、もう話を戻す気はないらしい。

頭の隅にそのことを追いやって、楽譜に向き合った。

吹いてみる。

途中で音が跳ぶ以外は、特に技術的に難しいことはなかった。

俺が吹き終わると、先輩は軽くうなずいた。

「まあ許容かしらね。補欠としては」

「許容……ですか。先輩のお手本を聞かせてください」

「お手本ってほどじゃないけど」

先輩は深く息を吸い込み、吹き始めた。

甘くほろ苦い絶妙な音質に、なめらかな跳躍、そして何より、音が感情を持っているようだった。