先輩は俺の顔に視線を戻した。

「相原を見込んでお願いがある」

「何ですか?」

「例の私のそっ……」

そこまで言って急に、先輩は顔を伏せて回れ右した。

そしてそのままドアの方へ向かい、音楽室を出ていってしまった。

宙ぶらりんになった言葉を抱えて、俺は立ち尽くすしかなかった。