ちょっと気まずくなったなぁと思い、生徒のファイルを手に取る。
生徒のファイルには、今までの学習が記録されている。
テストの点数や成績、どんな授業をしてきたか、など。
ぺらっとページをめくる。
あ。
優ちゃん初めてじゃん。
今までの授業の記録もくそもねーわな。
ファイルを閉じかけたところでチャイムが鳴る。
「 起立 」
優ちゃんは戸惑いを隠せていない。
「 今から授業開始の挨拶するんだけど、立てる? 」
優ちゃんは頷くとゆっくり静かに立った。
「 今から6講目の授業を始めます 」
ある塾講師がその挨拶をすると、パラパラと「お願いしまーす」との声が聞こえてきた。
「 よし、じゃあ始めよっか 」
俺は明るく元気な声で言った。
「 あのさ、学校で今どこやってる? 」
俺は覗き込むようにして聞いた。
「 ...因数、分解 」
間があって優ちゃんの小さな声が聞こえた。

