ギャルとメガブス

私は面食らって顔を上げた。

少年は、はにかむ様に笑っていた。

その微笑みに釣られ、私も笑うことができた。



多分、その瞬間が、延々といじめられ続けてきた私にとって、小学校に入学してから後の、一番最初のとても大切な思い出となった。



その日から、放課後私がピアノを弾いていると、少年がやってきて、私の傍らに立つようになった。


私は、この突如現れたオーディエンスに戸惑った。


しかし、弾いてくれと請われるまま、おそるおそる少ないレパートリーを披露しているうちに、徐々に羞恥心も消え、むしろ放課後の小さな演奏会を楽しみとするようになった。



少年の名は俊介。

四年生だった私の一学年上、五年生だった。