ギャルとメガブス

私は少年の言葉を待った。

それは恐らく「メガブス」「キモい」といった類の、私を罵るための言葉。



だが、少年は私が予想していたような言葉は、一切吐かなかった。

彼が言ったのは、私が想像すらしなかった、シンプルだが非常に美しい言葉だった。



「ピアノ、上手だね……あの、僕も、ピアノ好きなんだ」


上手。


好き。



心地良い響きが、自分に向けられたのだと理解するまで、たっぷり1分以上は掛かっただろうか。


だって、こんなこと、今まで一度だってなかった。