ギャルとメガブス

唇を噛み締める。

指で涙を拭おうとするが、デコラティブな装飾の施された長いネイルが邪魔をする。



帰ろう。


もう、ワケが分からない。


こんな場所になんて、一分だっていたくない。


家に帰って、シャワーを浴びて、眠りたい。

そうしたら、これが全部夢だと思えるだろう。

そして、明日からはまた再び、可愛くて皆の憧れの的、カリスマ店員のミナとしての日常に戻れるだろう。




踵のもげたヒールの靴を手に持って、私は歩き出した。

俊くんを無視して。


「みいちゃん!」


追い縋るような声。