駅員が睨むので、私は酔いでもつれる足で、そそくさと電車を降りた。

季節は夏に差し掛かるところだったが、夜のホームは湿気を含んだ空気が冷やされて、薄ら寒かった。


もう一度、表札を見上げる。

駅に灯る蛍光灯の光が、居眠りをしていた目に突き刺さる。



ここは、私が昔住んでいた街。

幼少時代を過ごした街だ。



……富士見が丘。

嫌な響き。



私にとって、その街の名は、自分の暗部を彷彿とさせるものでしかなかった。

私にとってのこの街は、かつて「メガブス」と呼ばれていた自分の象徴みたいなものでしかなかった。

何一つ、良い想い出なんてない。

消し去りたい過去。

それなのに、いつまでもメガブスの陰は私に付きまとい、人生の節々で私を卑屈に、小心にさせる。