ギャルとメガブス

「みぃちゃん」


俊くんが私を呼んだのが聞こえた。

だが、踏み切りの警報が、また二人を引き離す。



それから電車が通過するまでの数分が、どれだけもどかしく、どれだけ長かったことだろう。



私たちは、遮断機が上るのと同時に歩き出した。

俊くんは、一度家に帰って何処かへ出かける途中であったのだろうか、スポーツタイプの自転車を押していた。



私たちは、踏み切りの真ん中で向かい合った。


「久しぶり」


俊くんが笑う。


「元気だった?」


私は頷いた。

何故だか、涙が毀れそうだった。

「どうして、最近音楽室に来ないの?」

俊くんの笑顔が、少しだけ悲しそうに変化する。

私は、まだランドセルの奥底にしまいっ放しになっている、くしゃくしゃに破けた五線譜を思い出し、胸がキリキリと痛んだ。


「……ごめん」

「べ、別に謝ることじゃないよ」


俊くんは慌てたように言う。


「本当はね、行きたかったんだけど……行けなかったの」

「何で?」


私は黙り込む。

言いたくない。

五線譜の話を俊くんに打ち明けるということは、私が苛められていることも同時にばらすことになる。