ギャルとメガブス

最後の登校から帰る道すがらを、私は今でもはっきりと覚えている。

富士見が丘の踏み切りで、私は鈍行電車が通過するのを待っていた。


カンカンカンカン……。


注意を促す踏み切りの警報が鳴り響く夕暮れ。

空はまだ青かったが、西の空は夕日で真っ赤に染まっており、それが低く連なる商店街の屋根の隙間から、ちらちらと覗いていた。



重苦しい車輪の音を鳴らし、電車が通過する。

私は目の前を横切る電車を、ぼんやりと眺めていた。

電車が過ぎ、警報が鳴り止む。

遮断機が上がる。



だが私は、歩き出せなかった。

思わず足が止まった。



私の正面、踏み切りの向こう側に立っていたのは、俊くんだった。



俊くんも、目を丸めて私を見ていた。

俊くんも私も、この街の同じ小学校に通っており、つまり、学区は同じだった。

だから、街中でばったり出会ったとしても、それは取り立てて珍しがるようなことではない。

しかし、私たちはこれまで、学校の中以外で顔をあわせたことはなかった。

向こうがどう思っていたのかは分からない。

だが、私にとって俊くんは「学校の中の人」であり、外の世界で会うことに、極めて違和感を覚えた。



まるで、幻覚でも見ているかのような。

夕暮れの中に佇む俊くんは、明け方に見る、薄らぼんやりした夢みたいだった。