ギャルとメガブス

私がいくら隠しても、母は私の苦しみを、私が思っている以上に察知していたようだ。

母は責任感が強く、そしてとても優しい人間だった。

だから、父親がいない家庭環境に対する罪悪感が、より一層母を敏感にさせていたのだと思う。


ある日、夜勤から帰ってきた母が、短い睡眠の床に就く前に、母とは入れ違いに登校しようとしていた私に言った。


「ミナコ。ちょっと聞いて欲しいことがあるんだけど」

「何?」

「あのね……お母さん、おばあちゃんちに行こうかと思うの」

「今日?」


母は首を横に振った。


「違うのよ。引っ越そうかと思ってるってこと」


私は突然のことにびっくりして、目を丸めた。


「横浜のおばあちゃん、一人で住んでいるでしょう? だから、お母さんとミナコと、向こうに引っ越して、三人で住もうかなって思って」

「そう……なの?」

「東京にいても、仕方がないし、向こうの方がこっちよりのんびりしていて、きっと楽しいわ。……ミナコはどう思う?」


尋ねられても困る。

私は途方に暮れて、ただ母の顔を凝視していた。