ギャルとメガブス

普段なら待ち遠しくて仕方のない放課後。

だが、その日は放課後のことなんて考えたくなかった。

俊くんの楽しそうな表情を思い出すと、居たたまれない気分になった。

カバンの奥には、紙くずとなった五線譜が詰め込まれていたが、広げるのすら恐ろしかった。


何て言い訳しよう……。


クラスメイトに苛められました、なんて、俊くんには絶対に言いたくない。

じゃあ、適当に嘘をつく?

いや……俊くんに嘘をつくなんて、絶対に嫌だ。

どうしたら良いのだろう。




私はずっと、鞄の中の五線譜と、俊くんの顔ばかり考えながら、その日一日を過ごした。

授業が終わり、皆がわいわい騒ぎながら、一人、また一人と教室を立ち去って行く。

私だけが、椅子から立ち上がらなかった。

答えが見つからず、動こうにも動けなかった。

クラス全員が教室から出て行っても、私は椅子に座り込んだまま、ずっと落ち込んでいた。


……やっぱり、無理だ。


俊くんにあわせる顔がない。

ランドセルを背負い、私は教室を後にした。