ギャルとメガブス

「ブスブスブス~、メガブスちゃ~ん、ブスブスブス~、メガネを取っても気持ちわる~い~」


調子っぱずれな歌を歌いながら、ミキちゃんはツイストでも踊るように、両足を五線譜の上に乗せて、グリグリ回した。

床に散らばった五線譜の束は、すぐに何が何やら分からないような、千切れて汚れた紙くずになってしまった。

私は呆然としつつ、それを見守るしかなかった。

涙だけが毀れて、五線譜の上にぽたぽたと垂れた。


「うわ、メガブスが泣いてるぞ! 鼻水垂らして、きったね~」


隣の席の男の子が私をからかうと、教室の皆が一斉に笑った。


「……もう、やめてよぅ」


私はミキちゃんが踏み続ける五線譜を取り戻そうと、必死になって紙を引っ張った。

もう使い物にならないと分かっていても、それは私にとって宝物だったのだ。


「返して!」

「え、何? 聞こえなーい」


ミキちゃんは、薄ら笑いを浮かべたまま、足をどけようとしない。


「返してってば!」


私はヒステリックに叫んで、思い切り紙を引っ張った。