ミキちゃんは、先生たちにも評判が良く、明るくて、男の子たちとも仲が良かった。

一方の私は、先生の前でもクラスメイトの前でも、他人を目の前にすると上がってしまい、話すら満足にできないような人間だった。

今現在、心を許せる唯一の友達、それは俊くんだけだ。

つまり、この自分のクラスにいる限り、私は孤立していた。

先生がいれば、ミキちゃんは良い子ぶって、私に手出ししてこない。

だが、その時には運悪く、休み時間で先生は職員室へ行ってしまっていた。

ミキちゃんは私にとって、可愛らしい少女の仮面を被った悪魔だった。



悪魔は呟いた。


「あら、何これ。楽譜?」

私が拾おうと手を伸ばした五線譜に、ミキちゃんの上履きが乗っかった。


「え、自分で書いてるの? メガブスちゃんが? ブスの歌でも作ってるの?」

「やめて!」



ぐしゃ。



ミキちゃんの上履きが、五線譜に重力を掛けたまま、くるっと半回転した。

五線譜は皺くちゃになり、端の方が破けた。