休み時間に教科書の整理をしていた私は、机の上に置いていた、五線譜の束を床に落としてしまった。

ぱらぱらと舞い散る五線譜。

私は慌てて床にしゃがみ込んだ。

拾おうと伸ばした手の先に、誰かの上履きが現れた。

顔を上げると、クラスで一番私に絡んでくる、ミキちゃんがそこにいた。



ミキちゃんは、栗色掛かった艶やかな髪を、いつも両耳の上辺りで結っていて、天然パーマが掛かった彼女の髪は、肩に届く辺りで緩いウェーブを描いていた。

ぱっちりとした二重瞼、白い肌、おちょぼ口。

彼女は学年一の美少女で、だけど性格の悪さは、ちょっと尖がった目じりに現れていた。


「メガブスちゃん、何やってんの。目が見えなくて、落としちゃったの？」



ミキちゃんは、私を見下ろして笑った。

私は顔面蒼白になり、慌てて視線を逸らした。


私は、彼女が怖かった。


彼女と、彼女の友達……いや、取り巻きだ。

彼女の取り巻きたちに、突然後ろから泥んこの水溜りに突き飛ばされたり、上履きを隠されたり、そんな陰湿ないじめを受けていたからだ。