ギャルとメガブス

「ダメよ! あの曲は、俊くんじゃないとダメだよ!」

「みいちゃん、勘弁してよ。

これじゃ、どっちが大人か分かんないじゃんか」


苦笑いする俊くん。

子供の姿のままなのに、私よりも大人に思えた。


「――このピアノ、凄く嬉しかった。

ありがとう」

「弾きもしないくせに」

「あの時、ドブスなんて言って、ごめんね。

でも、みいちゃん凄い意地悪な顔になってて、僕、びっくりしちゃったよ。

だけど、ほんと良かった。

みいちゃん、昔に戻ったみたい。

笑った顔、あの頃のまんまで――」


全ての言葉を口にする前に、俊くんは私の目の前から、煙が掻き消えるように姿を消した。