ギャルとメガブス

「ピアノは、嫌いじゃないけど……だって、前は楽しかったから、皆に馬鹿にされたって、全然平気だった。

でも、今は、楽しくないんだ。

だから、馬鹿にされると、すんごい腹が立つ」

「だけど、俊くん、私のピアノ、毎日聞きに来てる」


私が言うと、俊くんはちょっと笑った。


「だって、みいちゃん、とっても楽しそうに弾いているから。

僕も、前はきっと、みいちゃんみたいにピアノ弾いてたんだろうな、って」

「私みたいに?」

「僕ね、もうね、ピアノなんて、弾きたくないんだ。

だけど、無理やり練習させられてる。

嫌で嫌でしょうがないんだ。

でもね、みいちゃん見てると、ちょっと弾きたくなってくる」


私は立ち上がった。


「……じゃあ、弾いてみてよ」

「え?」


俊くんが、目を丸めた。