翌日、教室に入ると目が合ったクラスメートに片っ端から爆笑された。

「さ、桜野、さすがだ。お前は男の中の男だ。ぶっくくっ」

中でも長谷部はえんえんと笑い続ける。

……お前の提案だろうが。

「まっさか本当にやるとはな」

窓ガラスにうっすらと映る自分の姿を見て、僕は情けなく眉……があったとこの皮膚を下げた。

昨日の長谷部の提案はこうだ。

一回どう見ても可愛くない見た目をつくる。

それで恵ちゃんが離れていかないか確かめる。

「てっとり早く顔と頭の毛全部捨てれば?」

僕は家に帰って、その言葉を実行したのだ。

お父さんに頼んで髪をバリカンでそり丸坊主に、眉も全部剃った。

まつ毛は……一本抜いてすごい痛かったから諦めた。

かくして僕は甘い甘い自分の見た目を捨て去った訳だが、これが予想以上に坊主が似合わない。

眉なしの相乗効果もあってか、今の僕は、なんというか変だった。

肌の白さがマイナスに働いて、海に生息する軟体動物を連想させる出来上がり。

……お母さんにも笑われるって、どうよ。

「ぶふっ、まぁいんじゃね?それで目的果たせんじゃん。予想以上の出来栄えだけどな。心配しなくても毛はすぐ生えるって。」

しつこく笑いながらもさすがに僕がかわいそうになったのか、長谷部はそう言って、頭をつるつる撫でてくれた。

「……恵ちゃん」

怖い、放課後が怖い。

(いやぁ、こんなの桜野くんじゃないっ可愛くない桜野くんなんて、桜野くんじゃない!)

とか言われたら、

…………生きてけない。