「お前は……時々、思考があらぬ方向へ飛躍するよな」

長谷部は心底呆れた口調でため息をついた。

「なんだよぉ、悪いかよぉ」

僕は自分で作った卵焼きを口に頬張りながら、ぐぅーっと長谷部を睨みつけた。

「あのな、お前は恵ちゃんのこと、その程度だって思ってんのか」

「ほえ?」

「だーかーらー、お前はお前の彼女のことを、人を見た目だけで見る奴だと思ってんのかって」

「うっ」

僕は言葉につまり、俯いた。

いや、長谷部の言うことが的を射ていたからではない。

むしろ、的が外れていることを恐れてである。

あの子は、あの子は可愛いものが大好きだ。

………俺のことも、愛でる対象としか見ていないとしたら……

「いやだぁああああ‼」

「うわぁっ、びっくりした」

いきなり絶叫した僕に、長谷部がびくりと体を竦ませた。

「うーあーうーどうしよーわかんなーいめぐみちゃんがわかんなーい」

「じゃ、こういうのはどうだ」

顔を机の上に突っ伏し、足をバタバタさせる僕に、長谷部はにやにやしながらある提案をした。

「……ほえ?」

考えてもみないことを言われた。

ことを起こすのに若干勇気がいりそうだ。

でも……

『桜野く〜ん、大好きっ』

大好きな笑顔が頭の中でキラキラ弾けた。

「……いいかも」

「え、まじ」

自分で提案したくせに、長谷部はいちごミルクをちゅうちゅう飲みながら目を見開く。

「お前がいったんだろ」

「いや、ギャグだし、ジョークだし、戯言だし」