恵ちゃん。
大切な僕の恵ちゃん
当時新入生の彼女が家庭科室の前で入るに入れなくてもじもじしてるのを見たの
が最初。
それからだんだん打ち解けていって、明るくて優しくて、元気いっぱいな恵ちゃんを好きになった。
生きてきた17年間の中で最高にドキドキしながら告白したら、彼女は一生懸命こくこくうなづいてくれた。
彼女は感情表現がストレートだ。
彼女の性格からか『嫌い』という言葉を使うのは聞いたことがないけれど、『好き』『大好き』は毎日連発している。
「このケーキおいしい〜好きっ」
「今日の空好きだなぁ、すごく綺麗」
「きゃーっ、このぬいぐるみかわゆいぃ〜〜好き〜らぶ〜」
「わたしチョコレート大好き!ミルクもいいけどビターだなぁ」
「桜野くん、可愛い桜野くん、大好き」
大好きって言われるたびに嬉しくなる。
僕はもっともっと大好きだよって、心の中で叫んでる。
でも………
「可愛い可愛い、桜野くん、今日も可愛い〜」
……可愛い。
恵ちゃんは、いっつもそれなのだ。
鏡を見ると、我ながらラブリーな見た目してるよな、と自分に感心する。
そして不安になる。
恵ちゃんが好きなのって、僕の見た目だけじゃないよね?
高校生の分際でアホかって言われそうだけど、恵ちゃんは僕の運命の人だと思ってる。
結婚したい、一生添い遂げたいと思ってる。
前に友達の長谷部にそのことを話したら、
「お前……若干、きしょいな」
と引かれた。
分かってるよ!
自分でもちょっと気色わ……変だなって思うよ‼
でも、そんくらい恵ちゃんのことが好きだから、もし恵ちゃんが好きなのが僕の見た目だけだとすごく困るのだ。
だって、いつまでも可愛い姿でいられるわけじゃない。
今の姿は今だけのもので、僕だって確実におじさんになるのだ。
そのとき、お世辞にも可愛いといえなくなった僕を見て、恵ちゃんが愛想をつかしてしまったら………っ
ひゅっ
考えただけで勝手に喉が締まる。
「おーい、桜野、生きてるかー」
昼休み、机につっぷして飽きもせずそんなことを考えていると、上から声がふってきた。
長谷部だ。
サッカー部所属、僕とは小学生からの腐れ縁だ。
「なぁ、長谷部」
「ん?」
「僕ってあと何年くらい可愛いままだと思う?」
「………頭打ったか」
真剣に尋ねると、長谷部は僕を可哀想なものを見るような目で見下ろして言った。
「冗談で聞いてるんじゃない!本気で尋ねてるんだ」
「そりゃ、ますます重症だな」
長谷部はよっこらせ、と僕の前の席に腰かけて、購買で買ってきたらしいパンを食べはじめた。
「どうした、恵ちゃんと何かあったか?」
「別に……なにもないけど」
そう言いつつも、僕はぽつぽつと半ば拗ねたような口調で自分が心配していることを話した。
大切な僕の恵ちゃん
当時新入生の彼女が家庭科室の前で入るに入れなくてもじもじしてるのを見たの
が最初。
それからだんだん打ち解けていって、明るくて優しくて、元気いっぱいな恵ちゃんを好きになった。
生きてきた17年間の中で最高にドキドキしながら告白したら、彼女は一生懸命こくこくうなづいてくれた。
彼女は感情表現がストレートだ。
彼女の性格からか『嫌い』という言葉を使うのは聞いたことがないけれど、『好き』『大好き』は毎日連発している。
「このケーキおいしい〜好きっ」
「今日の空好きだなぁ、すごく綺麗」
「きゃーっ、このぬいぐるみかわゆいぃ〜〜好き〜らぶ〜」
「わたしチョコレート大好き!ミルクもいいけどビターだなぁ」
「桜野くん、可愛い桜野くん、大好き」
大好きって言われるたびに嬉しくなる。
僕はもっともっと大好きだよって、心の中で叫んでる。
でも………
「可愛い可愛い、桜野くん、今日も可愛い〜」
……可愛い。
恵ちゃんは、いっつもそれなのだ。
鏡を見ると、我ながらラブリーな見た目してるよな、と自分に感心する。
そして不安になる。
恵ちゃんが好きなのって、僕の見た目だけじゃないよね?
高校生の分際でアホかって言われそうだけど、恵ちゃんは僕の運命の人だと思ってる。
結婚したい、一生添い遂げたいと思ってる。
前に友達の長谷部にそのことを話したら、
「お前……若干、きしょいな」
と引かれた。
分かってるよ!
自分でもちょっと気色わ……変だなって思うよ‼
でも、そんくらい恵ちゃんのことが好きだから、もし恵ちゃんが好きなのが僕の見た目だけだとすごく困るのだ。
だって、いつまでも可愛い姿でいられるわけじゃない。
今の姿は今だけのもので、僕だって確実におじさんになるのだ。
そのとき、お世辞にも可愛いといえなくなった僕を見て、恵ちゃんが愛想をつかしてしまったら………っ
ひゅっ
考えただけで勝手に喉が締まる。
「おーい、桜野、生きてるかー」
昼休み、机につっぷして飽きもせずそんなことを考えていると、上から声がふってきた。
長谷部だ。
サッカー部所属、僕とは小学生からの腐れ縁だ。
「なぁ、長谷部」
「ん?」
「僕ってあと何年くらい可愛いままだと思う?」
「………頭打ったか」
真剣に尋ねると、長谷部は僕を可哀想なものを見るような目で見下ろして言った。
「冗談で聞いてるんじゃない!本気で尋ねてるんだ」
「そりゃ、ますます重症だな」
長谷部はよっこらせ、と僕の前の席に腰かけて、購買で買ってきたらしいパンを食べはじめた。
「どうした、恵ちゃんと何かあったか?」
「別に……なにもないけど」
そう言いつつも、僕はぽつぽつと半ば拗ねたような口調で自分が心配していることを話した。


