桜野くんは可愛い。

どれくらい可愛いって、そりゃ、山よりも高く海よりも深く。

わたしが始めて彼に会ったのは、高校に入って、調理部の見学に行った時。

桜野くんは調理部の先輩だった。

家庭科室の前、どうしても勇気がでなくて一人もじもじしていると、ガラガラとドアが開いて男の子が一人出てきた。

「あれ、一年生?見学の子かな?」

わたしより少し上の方にある顔がにっこりと微笑む。

優しそうなたれ目に、長いまつげ、ちょっぴり薔薇色のほっぺに、小さな唇。

(か、かわいい〜〜!)

可愛いものをこよなく愛するわたしは、その瞬間桜野くんの虜となった。

「おいで、美味しいクッキーがあるんだよ。」

桜野くんはぽやんとしたわたしの手を優しく引いて、家庭科室に入れてくれた。

「みんな〜、見学の子来たよ〜」

「おっ、やった!第一号っ」

桜野くん以外はみんな女の先輩。

紅一点、の逆。

わたしはなんの迷いもなく調理部に入部した。

だって、可愛いものを愛でるのがわたしの生きがいだから‼