「まだ、分かんねぇの…?」
「え…?」
遥輝の足が止まる。
気がつくと、もう私の家の前まで来ていた。
夕日が少し暗くなって、もう夜に近かった。
「俺がお前に優しい理由、分かんねぇ?」
遥輝が私に、優しい理由…
「うん…。」
「俺は、可奈子のことが好きだから…。」
「え…?」
「気が付かなかった?
俺ずっと、可奈子のことが好きだった。可奈子が、大樹を好きな頃から。」
全く考えなかった訳じゃなかった。
もしかしたら、って…。
だけど自意識過剰かな?って思って打ち消してきた答えだった。
「そういう、事だから…。じゃあ。きょうは、ありがとう。」
頭がフリーズして、何も答えることができなかった私を置いて、遥輝は帰って行ってしまった。