ガチャン


屋上の重い扉を開くと、気持ちいい風が吹き込んできた。


「わーー気持ちー!
私、屋上初めて来た!」


「座ろ。」


と言われたから、二人で屋上の壁に寄りかかって座った。


「あの、さ、ありがとう。

連れだしてくれて。」


遥輝くんは、いつも絶妙なタイミングで私を助けてくれる。


「うん。俺も、分かるからさ。

三科と同じような経験した事あるんだ。」


「そう…なんだ」


遥輝くんの、過去…


そっか、だから、いつも辛い時に来てくれるんだね。


「ま、俺の場合、俺のほうが先に付き合ってたんだけどさ。」


「え…?じゃあ、取られちゃったってこと?」


「まー、そんなとこ?」


と言って、軽く笑った。


「すぐに、その人の事、忘れられた?」


「いやー…すぐには無理だったな。

今は、全然未練もないし、もう吹っ切れてるけど。」


「どーやって、忘れたの…?」


私が今、一番知りたいこと。


「三科の、大樹への思いはさ、忘れようと思って忘れられるものなの?」


忘れようと思って忘れられる…?


「違う…」


「好きになるのも、好きになりたくてなったわけじゃないだろ?

それと一緒。

忘れるのも、忘れようと思って忘れられるものじゃないんだよ。」