大樹に、こんなこと言われたら涙が出そうになってしまうよ…


じゃあ、私が背中を押さなかったら、さゆちゃんと付き合わなかった?


まだ、私が入るチャンスはあった?


大切にする。って、私に言って欲しかった。

考えれば考えるほど、どんどんずるくて汚い自分が出てきて、自分が嫌いになってしまう。


やっぱりまだ忘れられない…


もう、何度も心の中で言った。


でも、直接言うことは出来ない…。



好きだよ、大樹…。




「…なんか、寒くなってきたから、私中入るね。

さゆちゃんとのこと、おめでとう。」


大樹の目を見て話せない。


おめでとうなんて、1ミリも思ってない。

言いたくない。


でも今は、そう言うしかなかったし、

それぐらい優しい私でありたかった。



「うん。ありがとう。

あのさ、朝…」


「朝は別々に行こうね。

さゆちゃんに余計な心配、かけたくないから。

別々に行こう…。」


自分から言った。

大樹に言われるのは、嫌だったから…



「うん。分かった。」


「じゃあ、おやすみっ!」


部屋に入ろうとした時。


「可奈子、おやすみ。」


「…っ。」


大樹の方を一回も見ないで部屋に戻ってカーテンを閉めた。