何も言わずに、びしょ濡れのままリビングに向かうあの人。
恐る恐るついていくと、薄暗い部屋の中でこっちを向いてあの人は立っていた。
「どうして帰ってきたの…?」
「…遥輝って誰だ?男か?」
私の質問には答えずに、逆に質問を返してきた。
「え…?ちっ違うよ…!」
なんであの人がこんなことを言ってくるのか、まったくわからない…
「前は大樹とか言う奴だったよな。やっぱりお前も母親に似て軽い女だな。」
あの時と同じ、鋭い目つきで私を嘲るように睨んでくる。
「ちがう…大樹も遥輝も彼氏なんかじゃないよ!」
「お前の母親も、男をとっかえひっかえしてたな。」
「っ……」
本当は、薄々気づいていた。
私の母は、浮気をしていたってこと。
きっと、そのせいで父は暴力をふるい始めた。

