2人で並んで立っていたなら私も浮気だとは思わなかった。でもさ。





「彼女以外の女と手を繋いでディープキスって、浮気の他になにがあるの?」





最近、祐也と会う時間がなかった。


私は暇だったけど、祐也が部活やバイトで忙しいと言うから会えなかった。


夏休みだからなおさら。




なのに、なのに。





「そ、それは……っ」

「浮気でしょ?浮気だよね?」

「……」





黙りこんだ祐也。金魚のように口をパクパクさせている。



それを見計らったのか、美希_____山下美希は祐也を庇うように前へ出た。





「さっきから聞いていたら、祐也を責めちゃって。なんなの?」

「あんたは黙っててくれる?」

「黙らないよ!それに、そっちがそんな性格だから祐也も冷めたんじゃないの?」





得意気に鼻で笑った山下。



私は怒るという感情が湧き上がってくるどころか、冷めた。

自分でも驚いている。
彼氏の浮気現場に遭遇したにも関わらず、冷静でいられるなんて。






「彩子!」

「なに」

「ごめん、ほんとごめん!でも違うんだ!違うんだって!これはこいつが勝手に……」

「ひど~!私のせいなの~?」

「……」






なんで謝られてんの、私。
なんで惨めになってんの、私。
なんで山下に笑われてんの、私。