今日から私、榎本由佳は高校生。
小さい頃に両親が他界して施設に入った。
双子の姉はとても美人で
大人の人にも可愛がられていて
親戚の人に引き取られた。
だから私たちは離ればなれになったのだ。
そのあと引き取り手が見つかって
今は東さんの家でお世話になっている。
中学時代テニス部で全国大会まで
勝ち進んだこともあり
私立星森高校に推薦された。
お姉ちゃんが小さい頃から憧れてた学校。

また、会えるかもしれない

そんな期待を胸に
私はこの学校に通うことを決めた。

あ、そろそろ行かなきゃ

「いってきまーす」

「いってらっしゃい」

電車で二駅、割りと近め。
憧れの通学電車。

前言撤回。
きついし苦しいしもう嫌。
二駅だけなのにこんなに辛いとは
思ってなかった!

同じ制服の人も見当たらないし
本当にあってるのだろうか…

「次は星森高校駅、星森高校駅」

次、だよね?

私はふとドアの近くに
座っている少年を見た。

同じような、制服?
寝てるみたい…

起こしてあげたほうがいいよね?
私は人の波をかきわけて
その男の子のそばに寄った。

「おーい、次星森高校前だよー?」

他の人に聞こえないように
小声で言ったから聞こえてないのかな?
スースーと気持ち良さそうに寝ている。

「星森高校駅、星森高校駅です」

つ、着いちゃった。どうしよう

もう方法はこれしかない。

私は元テニス部だ、これくらいの子
おんぶできる!

私は男の子を抱えて電車から出た。
近くにちょうどあいている椅子があって
そこに座らせてあげた。

「間に合うかな?」

私は男の子の隣で座りながら呟いた。

起きる気配がない。

私は仕方なく男の子が手に握っている
定期券をとって再度おんぶした。

改札口まで来ると同じ制服の人が
たくさんいて笑われた。

「あの、おろしてほしいです…」

背後から声が聞こえた。

あ、起きたんだ!

「ご、ごめん」

ああー、どうしよう。
みんな見てるよね…

「ごめんなさい、勝手なことをして」

新学期早々大失敗。

「わざわざありがとうございます」

思いがけない返答に
私は驚きを隠せずに唖然としていた。

「実は僕低血圧で、すいません」

そうなんだ。
それにしてもひどい低血圧だな。

「そっか、じゃあまた学校で」

私はその場を走り去った。
一刻も早くこの場を去りたかった。


ギリギリ学校に間に合った私は
急いで体育館に向かった。

「新入生挨拶、榎本由梨」

お姉ちゃん?