スイーツ男子、佐藤くん

目が覚めると、そこは朝起きた場所と同じだった。そう、志優先輩の旅館だ。布団に寝かされた私は、どうすることも出来ず、ただ天井を見つめるだけ。

「…サチちゃん。起きた?」

「っ!さ、佐藤くん…!?あの、一体何が起こったの…?私、波に飲まれて、それで…。」

必死に聞くと、佐藤くんは淡々と言った。

「…あの後、僕が海に飛び込んでサチちゃんを連れてきたんだよ。」

「そうだったんだ…。」

しかし佐藤くんは黙りこんでしまった。

「サチちゃん、ごめんね。」

佐藤くんは小さくそう言った。そして、手のひらが私の頬に当たった。頬がジンジンと痛む。

私、今佐藤くんに叩かれたんだ。

「…サチちゃんはさ、確かに運動神経がいいから、あの女の子も助けられた。でもね。サチちゃんはどうしてあの時、自分の命を顧みずに行ったの。あの女の子を心配していた人はいるけど、サチちゃんのことを心配してる人だって、いるんだよ!」

佐藤くんにしては珍しく大きな声だった。確かに私、あの時自分のことなんて全く気にせず、ただあの女の子を助けようって、それだけの気持ちだった。

「…叩いてごめんね。少なくとも僕はサチちゃんが海に飛び込んだ時、心臓が止まるかと思った。サチちゃんのことを信じてないわけじゃない、けど…あまり危ないことをしないで?」

「…うん。善処するよ。」

そう言って立ち上がろうとすると思わず身体がよろけ、転びそうになる。