調理室を出て、帰路へと向かう。今日から夏休みだあ…とワクワクしてくる。ううん、まだ少し気分は落ちるけど。

歩いていると私の目の前に一人の女の子が立ちふさがった。茶髪をツインテールにしている、可愛い子。

「あの、藤山沙智さんですよね。」

「そ、そうですけど…。」

あぁ、思い出した。この子、昨日佐藤くんに告白していた女の子だ、

「私、1年の岡野まほらといいます。…あの、昨日私佐藤慶太先輩に告白したんですけど、ふられたんです。」

「は、はぁ…。」

「貴女と佐藤先輩、付き合っているんですか？」

「え、ええ！？ち、ちがうよ…。」

そう言うと目の前の岡野さんは「はぁ？」と大きな声で言った。

「じゃあなんで、佐藤先輩は私をふったんですか！だっておかしいじゃないですか、ふられた理由が大切な人がいるからって！それって、貴女のことじゃないんですか！？」

目の下を赤くして岡野さんは叫んだ。佐藤くん、断ったんだ…って、今はそこじゃないよ。

佐藤くんの、大切な人。
ううん、私じゃないよ。

私と佐藤くんは、仲のいい友達。
そう、友達なんだよ？

「…私と佐藤くんは、友達だよ。」

振り絞った声は、なぜか震えていた。