「〜〜!そうだよ!増子先輩だよ!1年の時からずっとな!」

「お、おおお…。」

女子というのは基本的に恋バナが好き。かくいう私も例外でなくて、しかも割と親しい人の話となるとやっぱりドキドキするわけで。彼の話に興味津々だ。

「…何処が好きなの?」

佐藤くんが淡々と聞く。

「…俺、弓道部だったじゃん?1年の時に増子先輩、いたんだよ。そん時の俺は調子も絶好調、誰も慢心する俺を止めてくれなかったんだよ。そんな時、唯一叱ってくれたのが増子先輩…って、な。なんか話すの照れるな!あー!もう、なし!今の終わり!」

ブンブンと手を横に振って撤回しようとするも、私も佐藤くんも、すでに聞いてしまってる。伊織くんの話を聞いて、佐藤くんが何か考えているようだった。

「…伊織。」

「な、なんだよけーちゃん!」

「テストの点によっては…増子先輩とのデートを企ててあげるかも…僕、姉さんに協力してもらえるし…。」

その言葉を聞いて伊織くんが勢い良く立ち上がった。私はその反動で倒れた椅子を立て直す。

「けーちゃん!俺頑張る!」

彼の瞳はやる気に満ちていた。

頑張って、伊織くん!