「本物のアホやろ、いおりん!まず文法がなってへんわ!ウチほんま怒るで!?」

「いや、本当に分かんないんすよ!」

「普段から英語使えばすぐに覚わるわ!ウチなんてオカンの実家行ったら全部英語や!」

「先輩日本人じゃないっすか!」

「ちゃうわ!ウチのオカンがフィンランド人!実家もや!んでもってオトンが日本とイギリスのハーフやで!実家は大阪や!」

「マジっすか…増子先輩やべっす…。」

「敬ってええんやで!ほれ、続きやるで!」

伊織くんと真広先輩の攻防を横目にノートに問題を書きまくる。

「…隣がうるさくてすまんな。」

「あ、いえ…先輩が謝ることでは…。」

さっきから先輩の教え方が上手く、問題もスラスラ解けるようになった。すごい、さすが生徒会なだけある…。伊織くんも真広先輩に英語を叩き込まれている最中。真広先輩はどうやらフィンランド語、クイーンズイングリッシュ、そして日本の関西弁と話せるらしい。

「…なかなかできるようになったな。」

「せ、先輩の教え方が良いからです。」

「…嬉しいことを言ってくれるな。俺も教えがいがある。」

もうすぐ始めて1時間ほどがたつ。短い時間だったけれど、志優先輩について分かったことは、案外怖い人じゃないということだった。