「さすがに僕一人じゃ大変だなぁ…。今度から助っ人でも呼ぼうか…。」

佐藤くんは小さな声でぶつぶつとつぶやいていた。ど、どうしたんだろう…。


その翌日もテスト勉強は続いた。

「…もしもし、姉さん?悪いけど姉さんの知り合いで勉強見てくれる人、いない?あぁ、僕じゃなくて。伊織とサチちゃん。」

佐藤くんは姉である生徒会長先輩に電話中のよう。隣の伊織くんは頭から煙が出ているみたいにへばっている。私は一心に手に握っているシャーペンを動かした。やってもやっても、わからない…。

「…うん、ありがと。サチちゃん、伊織!今から姉さんの知り合いが手伝ってくれるって!悪いけど僕は1時間くらい席を外すけど…頑張ってね。じゃあ、行ってくる。」

「おー…頑張るー。」

「うん、あの、いってらっしゃい。

手を振ると佐藤くんは笑って調理室から出て行った。…佐藤先輩の知り合いって、どんな人だろう…。

少し待つと、扉の向こうから足音が聞こえてきた。その足音は調理室の前で止まった。

「ふ〜〜じ〜〜や〜〜ま〜〜ちゃん!!」

スパァン!!

扉が開かれた。独特のイントネーションに、黄色のリボン。この人は!

「増子先輩!?」

「んん、嫌やわぁ。ウチ、真広でええよ〜?お、いおりんおるやん。自分らあれか?アホなん?」

「違ういますって!俺と藤山は理解力ないだけっす!」

伊織くんはわたわたとしながら増子…じゃなかった、真広先輩と話している。

「…それだけ言うならこっちもやり甲斐がある。」

「げ。栗山先輩…。」

真広先輩の後ろにいたのは、栗山先輩だった。伊織くん、栗山先輩が苦手なのかな。思わず後ずさっている。

「チョコちんから頼まれとってん。んじゃ、ウチがいおりん教えんで!こー見えて、ウチ結構頭いいんやで?志優、藤山ちゃん頼むわ!」

「よ、よろしくお願いします!」

「…こっちこそ、よろしくな。」

こうして2対2の勉強会が始まった。