伊織はいいなぁ。

僕がいつも思うことだった。

直球勝負でなんにでも向かっていける伊織。僕はそんなことも出来ないんだ。

僕は温くなった紅茶を飲み干す。

「…サチちゃん、怒ったかな。」

先程の自分に後悔しか出来ない。僕はまたため息をついた。ため息をついたら幸せが逃げる、なんて世間は言うけれど、その言葉は今の僕にぴったりなのかもしれない。

…サチちゃん。

真っ赤になったさっきのサチちゃんの顔が思い出される。あんな顔、初めて見た。

「…ちょっと、可愛かったかもしれない。」

自分で言ってちょっとだけはずかしくなった。あぁもう、こんなの僕らしくない。