やってしまった…。

僕は思わず頭を抱えた。
サチちゃんにあんなことするつもりなんてなくて、ただその…サチちゃんにちょっとくらい危機感持って欲しい、という思いでやってしまったことなのに。

折角伊織がいなくなって、二人で一緒にティータイムだと思っていたのに。それを終わらせたのは僕だった。

「…本当はそんな柄じゃないんだけどな。」

一人っきりになった調理室で僕は呟いた。…サチちゃんの前だとなんだか余裕がなくなって、僕が僕じゃないみたいに思える。

サチちゃんに僕は本当の「俺」を見せられていないような、そんな気がする。

俺はサチちゃんが思うほど優しくなくて、きっと本当の俺を見たら幻滅するだろうから。

だから「僕」は今日もまた本心に鍵を掛けた。