雨はザアザアとけたたましく鳴り、止まる気配も感じさせなかった。私はぬかるんだ砂浜を必死に歩き、佐藤くんと同じ傘にいることを忘れようとした。意識したらきっと、また恥ずかしくなるから。

「…サチちゃん、肩、濡れてるよ。」

「え!?あ、大丈夫!」

「大丈夫、じゃないでしょ。風邪引いたらダメだから、もっと中に入って。」

佐藤くんは呆れた口調でそう言った。確かに私の右肩は濡れてしまっていて、少し寒い気もするけど…でも、もっと中に入って、なんて言われたら入らざる負えないし…。

「で、でも佐藤くんだって、肩が…!」

佐藤くんの私よりも高い位置にある肩も濡れていて、着ていたパーカーの色がそこだけ濃くなっている。よく見たら佐藤くんは傘を私側に傾けていた。

「私はいいから!佐藤くん、ちゃんと傘使おう?二人して風邪だなんて、洒落にならないし…。」

「そこまで言うなら仕方ないなあ。あ、でも雨が小雨になってるよ、サチちゃん。」

傘の中から外を覗くと、ちょっとだけ雨の勢いは落ちてきていて、遠くの雲の間からは日差しも見える。そろそろ晴れるかも。

…でも、晴れちゃったら、一緒に傘させないんだよね。