頭の中の何かがプツリと切れる音がした。サチちゃんが嫌がっていて、男達は下品な笑みを浮かべている。サチちゃんの首元は少しはだけていて、男達が何をしようとしていたのか、僕は瞬時に察した。

サチちゃんに、何をしているんだ。
「俺」の、大切な人に何を。

自分が切り替わるようなスイッチがいつもとは逆に傾く。いつもはサチちゃんに、「優しい佐藤くん」を見せて上げていたけれど、もう無理みたいだ。

だって本当の「俺」は。
サチちゃんが思うほど清らかで優しい人間じゃない。

俺はサチちゃんに嫌われるのを覚悟で、木へと走り出した。