大好きだったあいつ



「つーか、あれだな。
こうしてると懐かしいな。」


え。
洋平さんが懐かしいなんて言葉使うなんて!


「…あたしは思い出したくないけど。」


「へぇ。」


へぇって。


「………あの時の洋平さんは優しかったのに。」

ポロっと言った言葉に、洋平さんが静かにこちらを見たのが分かった。



「……あの時の洋平さんは、存在しなかったんだよ。
忘れな。」

分かってる。そんな事5年前に思い知った。


「何であんな風に突き離したのに、再会して知らんぷりしてくれなかったの?
もうあたしは思い出したくなんかなかったんだよ。」


「…………そうだな。
何でだろうな。」


曖昧な返答に、また心が騒つく。


「あたし、洋平さんの事凄い好きだったのに。
高校生じゃなかったらあの時………」


何言ってんのあたし!?


は、として口を覆った。


「……あの時どうして欲しかった?
俺はあの時ほのかちゃんが高校生じゃなかったとしても、本気で付き合う事はなかったよ。」


「そんなの分かんないじゃん…」


「はい?」


「高校生じゃないあたしを知らないくせに、そんな事分かんない!」


驚いた顔をする洋平さんに、再び我に返る。