大好きだったあいつ



「だいたいなぁ、会ってる最中に途中で抜けるような奴、友達でも俺はおかしいと思うぞ。」


「仕事かもしれないじゃん…」


「休日に呼び出しなんて早々ねぇよ。」


そうか…と黙り混むと、洋平さんは車を走らせた。


暗闇に光るビルのライトを見ながら、やっぱり鏡に映る彼を盗み見る。


優しくしたり、意地悪な事を言ったり、なんなの?


「どこ行くの?」


「どこ行きたいの?」


え?と振り向くと、あたしの答えを待つ横顔に戸惑う。


「…誰もいない所……」


分かった、と低く答えた洋平さんは、あの頃と同じだった。


それからラジオの音楽を聴きながら、少しウトウトしているとエンジンを切る音に目が覚めた。