「花博士」


いつからか私は皆にそう呼ばれるようになっていた。

というのも、私は花が大好きで、花の名前、特徴を含め花のほとんどを知り尽くしているからだ。

私はこの世の出来方がわからない。

みんな同じ人間なのに
みんな同じように母親から生まれてきたのに

なんで幸せになれる人がいて
なんで不幸になる人がわかれるのだろう

それは神様が動かしているのか
運命ってなんなのか
永遠って言葉は誰が作ったのか


なんて考え出したらキリがないけどね。
私は神様が嫌いだ。

確かに私は幸せに暮らしている。友達も居て賑やかな素敵な街に住んでいて優しいお母さんもお父さんも面白い妹もいて。

....でも

皆が皆幸せにはなれないのだろうか

私がこうしてぼーっとしてる間にもたくさんの人達が苦しんでいるはずだ。


私にできるのは募金活動とかボランティア。

非力な自分に腹が立つ。


だけどひとつ。
神様に感謝していることがある


植物や動物がいる環境を与えてくれてありがとう。

きれいな川
小さくても頑張って上を向いて咲いている花達
自然に生きる動物

見ているだけで癒される。

嫌なことも全部全部忘れられる。

本当に幸せな気持ちになれる時。

....

窓の外を見ると
綺麗な月が輝いていた。


そうして布団に入った



午前一時前。


....

朝、

さっさと用意をして家を出た。

妹が後ろからついてくる

「お姉ちゃん今日何時に帰ってくる?」

「19時ぐらいかな」

「そっか!」

高校2年の私、華恋と
中学3年の妹のゆい。

私達姉妹は二人で遊びに行ったりするほど仲がいい。

「じゃ、いってらっしゃい」

「うん、またねお姉ちゃん!お姉ちゃんも行ってらっしゃい~」

ゆいが笑顔で手を振る。

私も笑って手を振った。

ゆいと別れて高校へ急ぐ。

私の行く高校は遠くからくる子もいるけれど、私の家からは結構近くて歩いて行ける距離だった。


「華恋ーっ」


後ろから声がした。

「あ、桃菜、おはよう」

親友の桃菜が自転車で走ってきた。

「おはよー」


桃菜がニコっと微笑んだ



桃菜につられて私も微笑んだ


「今日も晴れてるね」

「そうだね、超暑いし。」


そう、今は夏真っ只中。

八月の一番暑い時期だった。


そうして話してる間に学校に着く。


教室は暑くてだるそうにしている生徒達で溢れ返っていた。



「皆今から授業だのなんだのあるのにもう疲れてるじゃ....」


と、後ろからポニーテールをしてる髪の毛を引っ張られる。


「いった....なに?!」

「おはよ、華恋 ....ちゃん」

「は、なにちゃん付してんの。気持ちワル!」

「うるっせーなあほ。わざとだよわざと。アホ華恋」

こいつは幼馴染みの大塚 隼。
本当、こいつとは腐れ縁っていうかなんていうか...。


「ばか隼!!!」

「べー。」

「ほんっと、仲良しだねあんたたち」

桃菜が笑っていう


「どこが」

隼とわたしが
口をそろえて言った。

「ほら仲良しじゃん」

桃菜が爆笑する

まあ、こんなあほな会話が楽しかったりするんだけどね。


こんなばかであほな隼だけど
顔は結構かっこよかったりする。
わたしにはあんなだけど
女の子にも男の子にも優しいし、
勉強もできないわけじゃないし
スポーツ万能。


むかつくけど嫌いではない。

....

午前の授業がおわって
昼休み。

私はいつものように一人で中庭に行った。


たくさんの花や木。

この高校は自然を大切にしてるから
たくさんの花とか木とか植えられていて
その奥には綺麗な川も流れてたりする。


昼休みになると私はここにきて本を読む。

いつのまにか私の中でこれが習慣になっていた。


「なぁ華恋」

「え?!」

いきなり声をかけられて変な声が出てしまった。


「なんだ、隼かぁ。びっくりしたじゃん。」

「はは、ごめんごめん」


「もう....で、なに?」

「あのさぁー。」

「ん?」

「今日放課後どっかいかね?」

いきなり何を言い出すかと思ったら....

「は?なに?別にいいけど..」

「やーりぃ!きまりな。」

「う、うん。」


そう言って隼はグラウンドへ向かっていった。


いきなりなんだろ。
行きたい場所でもあるのかな?


「あ、やば、もう授業始まっちゃう」

急いで教室に戻った。




そして放課後

「さっ、華恋、いくか!」

「あぁ、うん」


二人で校門に向かう

「あれ~?二人でデートですか?」

にやにやしながら桃菜が言った。


「そんなわけ...」

「まっ、そんな感じかな」

私の言葉を押しのけて隼が笑って言った。

なにばかなこといってんの?!

本当馬鹿だ、勘違いされるじゃん!!


「いくぞ華恋!」

私の手を引いて隼が走り出す

「ちょっ....ち、違うからねー!!」

隼に手を引かれながら桃菜に叫ぶ

「はーいはい、わかってますよ~っと」

桃菜はにやにや笑いながら手を振った



「あんた馬鹿じゃないの?!なにがデートよ!桃菜に勘違いされるでしょ」

「いいじゃん?」

にやっと笑って足を止めて
ゆっくり歩き出す

本当何考えてるのか理解不能。

「でさぁ、どこいく?」


「なに、決めてなかったの?」

馬鹿すぎてため息しかでない。
どこに行きたいかも決めてないのに
行くか、って....

あほじゃん。


「いーじゃん、いーじゃん。お前とどっか行きてぇなーって思ったからさー。」

なんて返せばいいか戸惑った。

そんなの言われたこともなかったから少しドキドキした。


「ばっかじゃないの...」

こう返すしかなかった。

隼はニカッと笑った

さっきから慣れないことを言われたからか胸が暑い。


「あ、あそこの公園!」


隼が指差す方向には花がたくさん咲いてる公園があった


「わぁ、綺麗...」


「なぁこれなんて花?」

「アンスリウム」

「へぇ、かわいい。さすが花博士」

そういって隼が笑う


おかしい

さっきから心臓がうるさい


隼が笑いかけてくる度にドキドキする


そんな気持ちに戸惑いながらも
私は笑った。


「俺さぁー」

「ん?」

「こうやってお前とのんびり花みて話すのも結構嫌いじゃねーかもなーって」

「なによ、いきなり」

「べっつにー」


隼の言葉一つ一つに心が揺れる

もしかして....私

隼のこと好きなのかな。

いや、なんでこんなバカなやつ
ありえない

....ありえない....かな、本当に

自分の心の中が一気にぐちゃぐちゃになった


好きなのかもしれない。

本当に。

「なにぼーっとしてんの?」

私の顔を隼が覗き込む。


ドクンっと心臓がなる。

「べ、べつに。花可愛いなって」

やっぱり好きなんだ

自分の気持ちに気づくのは結構早かった



隼のことが好きなんだ....私



初めて恋に気づいた

夕日が沈もうとしていた

午後19時過ぎ。