-桜の葉が青い





いつも通っている道のはずなのに、

いつのまにか桜が全て散ってしまっていた
ことにも気がつかなかった。



この道を通ることは、

それだけキラにとって
意味のないものなのだろう。

毎日毎日、ただ学校に行くためだけに
歩く道。


ここを通ることに何か意味を持つ日が、


-いつかくるのだろうか?


おそらく卒業するまで、

この葉が色づき、散り、花を咲かすため
またつぼみをつけても、

自分はただこの道を淡々と
歩き続けるのだろう。














しばらく歩くと、公園が見えた。

むかしよく遊んだこの場所だけは、
途中でいつも気がつく。




砂場遊びが大好きだった。

京子と大きな山をつくって
遊んだものだ。




京子以外で誰かと来たことは







-ない。






あぁ、でも1度だけ.....









「うわっ!」

ひとり考え事をしていると、
小石につまづき転んでしまった。



「痛っ....。」



自分のとろさに呆れながら、キラは
手のひらにできた擦り傷をみつめた。





カツカツと足音がきこえてくる。


どうやらすぐ前の曲がり角から
誰か来るようだ。



はやく立ち上がらなければ.....




そう思い顔をあげると、
その足音の主の後ろ姿が目に写った。













少女 だった。












そこには、色素の薄い柔らかそうな
長い髪をふわふわとなびかせた
少女の後ろ姿があった。



制服を見ると、同じ学校のようだ。





同じ制服を着ているせいだろうか。





それとも昔を思い出して
いたからだろうか。







その後ろ姿に懐かしさを感じた。





思い出したくても、思い出せないような、

いや、思い出してはいけない
ような、











そんなもろくて儚い記憶だった。