私、藤森 彩芽は、噂好き。
なにか新しい情報が入ったらすぐに確かめに行く。
誰かと誰かが付き合ってる。なんて噂は大好きだった。
二学期の後半あたりから流れていた噂は自分のこともあった。

『彩芽って彼氏できたんだって!』
『あれでしょ?野球部キャプテン!』

そう、私は野球部キャプテンと付き合ってた。
学校祭の時、私たちのクラスは開催集会をやることになり、
ダンスを披露するというものだった。

私はやらないつもりだったので練習などは参加せずに、
他クラスに遊びに行ったりしていた。

『だるい事は基本的にしない』
それが私だった。

ダンスだって私がする必要はない。
私より上手な人はたくさんいるし、私がやる理由もない。

担任の岡本に言われて適当にやったらやったで、ダンスのメンバーに入れられるし、
ツイてなかったとおもう。

でも、小さな楽しみといえば、野球部キャプテンの瀬川 新太のダンスを見ることだった。
結構イケメンで、性格も優しく、とてもいい人だと思う。
でも、その時は好きなどという感情は一切なかった。
たまたま席が近いこともあってか、話すことはなかったわけではないし、
至って普通の仲。
仲良くて羨ましい。なんて言われることもあったけど、
そんなことはなかった。
本当に必要最小限しか話さない感じ。
メールもしょっちゅうしてたわけではないし。

でも、好きになったのは私。

学校祭当日。
開催集会でトップバッターのダンスを披露したのは私たち女子のダンス。
そこはなんとか成功で終わった。

男子が踊る番になると、私たちは待機場所から出て、見やすい場所へと移動した。
その時の新太がどうしてもカッコよく見えたんだ。
その日から私の恋が始まった。