仁志は仕方なく静かに部屋を出て様子を伺った。
話しを聞いていると、佐藤が今の部屋と違う部屋にして欲しいとの事。

佐藤はここ最近、ひどい腰痛に悩まされていた。
佐藤の部屋は2階の一番奥。
階段を毎回毎回昇るのがキツイので、1階の部屋に変えて欲しいのである。
しかしババァは「代わりの部屋なんか無いだろうっ!無理じゃ!」
の一点張り・・・

「あの~僕の部屋と交換してもいいですよ・・・?」
仁志がボソッと呟いた瞬間、
「本当かい!?」
「お前は引っ込んでなっ!!」
という二人の声が向いた。

別に自分の部屋に執着があるわけでは無い。
ババァと隣の部屋も少し嫌だった。
たまに変な歌声が聞こえてくるし。

「ありがとう。じゃあ、早速部屋を代えてもらっていいかな」
佐藤が喜んで仁志に握手をしてくると、

「誰がいいって言った?ここの管理人は私だよ。部屋が気に入らないなら出て行きな。
 その歳で他に入れてくれる場所があるならね。」

そういい残すとババァは自分の部屋に帰って言った。

佐藤と山口は同時に
「くそババァ!!!!!!!!」
と叫ぶと、佐藤は残念そう腰を押さえながら自分の部屋へと帰って行った。

別に部屋くらい代えてあげてもいいのに・・・確かにくそババァだよ・・・。
腑に落ちない仁志に向かって

「金貸して??」
と笑顔で言う山口。

・・・・。
仁志は黙って部屋に帰って再び寝始めた。