なかなか学生時代の状況を話そうとしない息子に、フレイの勘が働く。手紙にはごく普通の学生生活を送り勉学に励んでいると書かれていたが、どうやら真実は違うと簡単に見抜く。
フレイは普段の冷静な一面を崩さず、低音の声音で真実を追究していく。恐ろしいまでに勘のいい父親にエイルは反射的に言い訳をしようとするが、父親相手にそれが通じるわけがない。
それに下手に言い訳を繰り返すと、後で何を言われるかわかったものではない。フレイの圧力に負けたエイルは項垂れると、自分が学生時代メルダースで何をやっていたのか話す。
話の途中、フレイの眉が動く。そのひとつひとつにエイルは過敏に反応し、時折声が裏返ってしまう。それでも何とか卒業時の出来事まで話すと「終了です」と言い、言葉を止めた。
「面白いな」
「す、すみません」
「何故、謝る」
「内容が内容ですので……」
「しかし、事実だ」
「そうです」
「だが……」
メルダース入学当初はバゼラード家の名前に泥を塗ってはいけないと、手の掛からない生徒を演じていた。しかしラルフとの出会いによって真面目な一面は崩れ去り、一族の恥とも取れる行動の数々を行なう人物に変貌してしまった。
その結果、クリスティ学園長やジグレッド教頭。それに多くの教師達からの評判は良かったが、いかんせんイメージが悪い。
父親の期待に答えられなかったことに檄が飛ぶのではないかとエイルは身構えるが、フレイは息子の行動を批判することはしない。それどころか、排他的な性格が改善したことを喜ぶ。また、これくらいのことで一族の名前が傷付くわけではないとエイルを安堵させた。
「お前は、クリスティ殿の無理難題をクリアした」
「あれは苦労しました」
「それだけで十分だ。それに、例の行動を咎める者はいなかったのだろう? 寧ろ、感謝されていた」
確かに今思えば、エイルの行動に反論してきたのはごく一部。その他大勢は彼の行動を褒め称え、日常の一部として楽しむ。特に一番の思い出は魔導研究会との戦いで、教師や生徒の間で賭け事が行われるまでに発展する。そう考えると、エイルの行動はメルダースの風紀を正したといっていい。


