ロスト・クロニクル~後編~


 息子の説明にフレイは、安堵の表情を見せる。自分が隊長として親衛隊の面々を率いていた時とは状況が違い、国の情勢は安定していない。その中で働く息子を心配してしまうのは親心というもので、上手くやり尚且つ周囲の者達がいい人物ならそれでいいと言葉を続ける。

「兄さんは?」

「あいつはあいつで上手くやっている」

「そうですね。とても器用だと思います。そのような点を見習いたいものですが、難しいです」

「メルダースで学ばなかったのか?」

「あの学園には、言葉で表せない個性豊かな方々が多く在学していました。メルダースは堅苦しいイメージがありますが、彼等を見ていますとそのようなことはなかったです。それに学園長からの無理難題を数多くこなしていましたので……嫌でも忍耐力はついたと思います」

 ラルフやクリスティの他に、珍獣を総帥と崇めていた魔導研究会の面々の名前を上げられる。総帥が卒業した今、彼等は今も活動をしているのか。それとも活動を中止し、研究会そのものを解散してしまったのか。懐かしい面子を思い出し、無意識にエイルの口許が緩む。

「笑っているが、何かあったのか?」

「メルダースには、面白い者達が大勢いました。彼等を思い出しまして、つい……すみません」
「いや、お前が面白おかしく学生生活を送っていたと思えば私も嬉しいものだ。一度じっくり、在学時の話を聞きたい」

「そ、それは……」

「都合が悪いのか?」

「都合が悪くは……」

 と、言葉を濁すが正直に言えば都合が悪い。自分に害を及ぼさない生徒に対しては普通に接していたが、ラルフを含め魔導研究会の面々に対して容赦なく高位の魔法を使用していた。また、フレイ直伝の関節技をかけて何度もラルフを昇天させたのはいい思い出といっていい。

 相手が事情を熟知している同級生であれば、これらの出来事を笑い話として面白おかしく語ることができる。しかしフレイにメルダースでの出来事を話した場合、笑い話で済ませることができない。

 在学当時フレイとやり取りしていた手紙にあれらの出来事は一切書かなかったので、息子があのようなことを行っていたこと自体知らない。知らないからこそ、事実を知った時の衝撃は大きいといっていい。何せ同級生相手に魔法をぶっ飛ばし、黒エイルと恐れられていたのだから。