ロスト・クロニクル~後編~


 だからこそラルフに大金を稼げる最高の仕事場を斡旋し、暮らす場所まで提供する。しかし全ての面で彼に力を貸すわけではなく、これから先は自分の力で生活しないといけない。

 友との別れが辛いのか、ラルフは引き止めようと試みる。しかしこれ以上は付き合っていられないとばかりにエイルは素っ気無い態度と言葉で別れを告げると、マリサに後を任せることにした。

 悲痛な叫び声は、ラルフの心情を表すものか。だが、彼の性格を熟知しているエイルは彼の叫びを無視するかのように両耳を塞ぐと、何も聞こえないとばかりに立ち去ってしまう。

 エイルの非情な仕打ちにラルフは崩れ落ちるが、それでも友を引き止めようとしているのかエイルに向かい手を伸ばす。勿論、エイルがその訴えに応えるわけがなくラルフは手を伸ばした状態で硬直する。

 ラルフの情けない姿を無言で眺めていたマリサは彼の心情に全く興味がないらしく、肩に手を乗せると一言「立ちましょう」と言い、仕事へ行くことを促す。唯一味方と思っていたマリサからの言葉にラルフは更に崩れ落ちると、地面に顔を埋めつつすすり泣きだしていた。


◇◆◇◆◇◆


 帰宅と同時にエイルは、ラルフの新しい仕事場での出来事をフレイに報告していく。フレイは自分が書いた紹介状が役立ち、これでメルダースへの借金返済が滞らないことを喜ぶ。

 そして息子からの報告にフレイは、ラルフにあの就職先を斡旋した本当の理由を語っていく。フレイ曰く、水晶の発掘場所は給料がいいので借金返済に最適というのが建前の理由であり、真の意味で選んだのは「ベーゼル」という人物に高い信頼を置いているからと話す。

「わかる気がします」

「適任だろう」

「ラルフは恐れていました」

「それでいい」

「何かがあったら殴られますが」

「人間、生易しい中では成長しない」

 その意見にエイルは、過去を思い出したのか身震いしてしまう。しかしそれは的を射た言葉であり、舐めきった態度を持っているからこそラルフはメルダースに天文学的な借金を作ってしまった。あの場所で世の中の辛さと厳しさを学べば少しは変化するのではないかと、フレイは言葉を続ける。